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山陰東浜の美少女(さんいんひがしはまのびしょうじょ)

2018年04月10日
高校1年生の夏、学校から臨海学校に鳥取県の山陰本線
東浜駅(ひがしはまえき)近くの民宿がたくさん集まって在る
ところで泊まった。昼間は、東浜海水浴場で水泳の訓練が
あった。元々泳ぎが苦手だったので、遊泳可能範囲と沖との
堺にあるブイにつかまったりと、誤魔化しながら遠泳訓練を
受けた。
夜は、ボランティアで来ている卒業生の大学生が下ネタも
含めて、アホなネタを披露していた。ま、お笑い芸人では
ないので、そのうち聞くのも飽きてくる。
そこで、ふらっと一人夜の散歩に出掛けた。あの辺は
ど田舎で街灯もほとんどなく、都市部、市街地では経験
出来ない程の闇が広がっていた。あるのは、沖合の漁船の
漁火と、満天の星だけ。
なかなか暗さに目が慣れないまま、しばらく歩くと透明ガラス
の大きい窓のある和風家屋が明るさを放ち現れた。
外からでも部屋の様子がはっきりと判る。モノクロ写真が
飾ってある、おそらく四十九日(しじゅうくにち)を迎えるまでの
祭壇と思われる。
自分とさほど歳の違わない美少女の写真だった。
あまりにも美しく、それが余計に薄命への哀しみを誘う。
どのくらいの時間かわからないが、フリーズしたまま
写真を見つめていた。
「さ、戻ろう。」自分に言い聞かせ、やっと民宿へ戻った。
同じクラスの誰にも言わなかった。
最終日の前夜、キャンプファイヤーをし、全員でたいまつを
海に向かって燃やした。
たいまつの先に巻いてあるボロ布の灯油の浸み込みが
悪いのか、例の美少女がこの世に未練があるのかわから
ないが、一人燃えないたいまつを掲げていた。

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